《MUMEI》

顔を上げた和馬は、少し困ったような、複雑な表情で笑った。


「何が?」


「俊彦に、嫌がらせのつもりで軽い気持ちで手を出したのに…ちょっと、ハマりそうになった。
天然魔性に」


和馬の言葉に、孝太の目が鋭く光った。


「…琴子に会ったら、そんな気持ちは吹き飛んだけど」


和馬が慌てて言った。


「何でそんなに俊彦を目の敵にしてたの?

俊彦がナンバーワンだから?

それとも、誤解を解くために、私を追いかけてきたから?」


「…ということは、俊彦と蝶子ちゃんの間にも、誤解があったって事?」


逆に和馬に質問されて、私は頷いた。


「花火大会で、誤解が解けたんだな?」


「…うん。…でも」


首を傾げる孝太に向かって、私は正直な気持ちを言った。


「付き合うかは、わからない。…今は、付き合うつもりはないの」


私の答えに、孝太も和馬も目を丸くした。


「…何で?」


「それより、私の質問に答えて」


私は話を元に戻した。


「あ、…あぁ。
別に、俊彦がナンバーワンなのは、ある意味認めてたし、好きな女の為に東京来たって聞いても、特に関心は無かったよ。
その時は、まだ琴子と喧嘩する前だし」

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