《MUMEI》 「逆に、好きな女に会えずに田舎に帰る俊彦を見下してたし」 「じゃあ、何で、嫌がらせなんて」 「君が戻って来たからだよ、蝶子ちゃん」 和馬は私の顔を指差した。 「私が?」 和馬は頷いて、話を続けた。 「『俺が琴子と会えないのに、何で俊彦、お前は好きな女に会えるわけ? しかも、何その馬鹿っぷり? …ムカつく』とか思って… 蝶子ちゃんを奪ってやろうかなとか、思ってしまいました。 …すみません」 和馬は最後の方は小声になりながら、また土下座をした。 …何となく、私にというより、私の隣の孝太を怖がっているように見えた。 「今は琴子一筋だな?」 孝太の言葉に、和馬は何度も頷いた。 「じゃあ、いい、…よな?蝶子」 「うん」 「本当に、今までごめんね。じゃ、俺、風呂入ってくるから」 和馬は部屋を出ようとした。 「ちゃんと『ここ』に戻ってこいよ」 「え〜、お兄様、それは…」 「琴子の部屋に行ったら許さないからな」 孝太の言葉に、和馬は心底残念そうな顔をした。 「私も困るから、やめてね」 「わかったよ…」 和馬は肩を落としながら、部屋を出ていった。 前へ |次へ |
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