《MUMEI》

◇◆◇

 子の刻。

 夢見が悪かったのか、咲弥は寝床から起き上がると雨音のする外を眺めていた。

 廊下へ出ると、奥の部屋から僅かに灯が漏れている事に気付き、咲弥はそうっと覗いた。

(‥‥‥ぁ)

 そこには付き人の姿があった。

「草薙──まだ起きてたの‥?」

 すると咲弥の声に驚いた草薙が振り返った。

「姫君──」

 草薙が言葉を詰まらせると、咲弥は静々と彼の傍らに座った。

◇◆◇

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