- 無銘文庫

《MUMEI》

◇◆◇

　漆黒の空。

　浮かぶ半月。

　雨はいつの間にか止んでいた。

「草薙、見て」

「？」

　傍らの咲弥の声に、草薙は筆を置く。

　静かな景色。

　月明りに照らされ、滴が輝いて見える。

　夢幻の如く甘美なその風情に、二人は暫し見とれていた。

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