《MUMEI》
確認
「じゃあ、私もそろそろ寝るね」


「待て、蝶子」


孝太が私の腕を掴んだ。


「何?」


「和馬とは、何も無かったんだよな?」


「… … うん」


「何かあったな?」


(う…)


私は本当に嘘が下手だった。


「別に、大した事じゃ…」

「言ってみろ」


孝太が私の目を見つめた。

「…耳、舐められた」


「どっち?」


「…こっち」


「どんな風に?」


孝太の美声が耳元で響いた。


「…別に、犬みたいに軽くペロッて…ひゃっ!」


孝太が軽く私の耳を舐めた。


「他は?」


(どうしよう…)


多分、孝太は和馬が私にしたことを、今度は自分がするつもりなのだ。


「他にもあるんだろう?」

孝太が私を壁際に追い詰めた。


「言わないと、キスするぞ」


言ってもキスになる。


「…やだ」


「言わない方が悪い」


「やだったら!」


バンッ


孝太の部屋のドアが開いた。


「…和兄は止めておいて、何してるの?」


現れたのは、琴子だった。

「…聞こえたのか」


「壁の音と蝶子の悲鳴がね」


琴子の部屋は孝太の部屋の隣だった。


孝太は無言で私から離れた。

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