《MUMEI》 ◇◆◇ 「───────」 「ねぇ草薙」 「───────」 「草薙‥?」 無言。 傍らの付き人は、咲弥の三度目の呼び掛けにも関わらず、空を見据えたまま表情一つ変えない。 「‥‥‥‥‥‥?」 咲弥は小首を傾げた。 (さっきまではわりと普通にお話してたのに──‥) だがそれ以上彼女が草薙に話し掛ける事はなかった。 気が向いた時だけでも会話が出来ればいい。 そう咲弥はそう思った。 「───────」 ざあ、と風が吹き、梢が揺れた。 その音を、黒蝶が呑気に屋根の上で聞いている事に、二人はまだ気付いていない。 ◇◆◇ 前へ |次へ |
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