《MUMEI》

(あ、危なかった)


私はそれから琴子と一緒に、琴子の部屋に行って眠った。


寝る前に、琴子にもう一度私が何を忘れているのか訊いてみたが、琴子は何も答えなかった。


翌朝。


「おはようございます!」

早々に父が迎えに来た。


父の後ろには、眠っている友君を抱いた華江さんもいた。


私は慌てて支度をして、玄関に向かった。


孝子さんと裕太さんは起きていたが、琴子はまだ熟睡していた。


「あれぇ、もう行くの?」

ボサボサ頭の和馬が玄関に出てきた。


「うん。琴子に声かけても起きなかったから、ありがとうって伝えてくれる?」

「あぁ。琴子も孝太も低血圧で、朝は弱いからな。
ちゃんと言っておくよ。

またね、蝶子ちゃん」


『またね』


その言葉は、和馬が『シューズクラブ』に戻る事を意味していたが、私は琴子はどうするのだろうと思った。


(遠距離って切ないよね)


「大丈夫だよ、蝶子ちゃん」


「そう?」


心配そうな私を見て、和馬は自信満々に言った。


「うん。あぁ、それとね」

和馬は私を手招きした。


もう何の心配も無いから、私はすぐに和馬に近付いた。


「花火大会の夜ね…

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