《MUMEI》

「うん」


それは、私と俊彦がいなくて、皆が私達を探し回った時の事だった。


「蝶子ちゃんに、俺から電話とメール行ったでしょう?」


私は頷いた。


「あれ、俺じゃなくて、俺の携帯奪った孝太だから。
…孝太の事、真面目に考えてやってね」


「考えてるよ」


「ならいいけどさ…」


(そういえば…)


「ねぇ、私と孝太さんて、もしかして、私が『クローバー』に来る前に会った事ある?」


和馬なら知っていそうな気がして、私は質問してみた。


「聞いた事無いけど…そうなの?」


逆に和馬に質問された。


(おかしいな)


てっきり和馬も知っているかと思っていたから、意外な反応に私は戸惑った。


「何話してるの? 行くよ!」


「あ、今行く」


父に急かされ、私は慌てて車に乗り込んだ。


結局、孝太も琴子も起きては来なかった。


それから一泊二日。


私は、千葉にある父と華江さんと友君の家で過ごした。

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