《MUMEI》

「・・・・言いたくなかったらいいけども」

黙る俺に、店長は投げやりに言ってコーヒーを飲んだ。
今ここで言わなければ何とかなるもんなのか?一瞬考えるが、そんなはずもないと甘い考えを思い直す。
いっそ言ったほうがいい、とは思うがなんと言っていいかわからない。

「好きなんだ?」
「えー・・・・、は、い」

断定的な口調に頷くと、ふぅん、とあっさりした相槌を打たれる。

「うんうん、だったら何となくわかるもんな。最近お前が妙に距離とってんのも、わかる気がする」

さらっと言われて言葉に詰まる、バレてたのか?この人には。友人という距離感を保とうと、必死に振舞ってきたつもりだったのに。

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