《MUMEI》

「そんなしょぼくれんなって、別にどうこうしないから。ただ気になっただけだし」
「・・・・やっぱり、変ですかね」
「変、かもしれないけどさ。そういう奴もいると思う」
「・・・・」
「だから、気にすることじゃないよ。あー、俺が図星つっついたのは悪かったけどさ、理解者の一人や二人いたって悪いもんじゃないだろ?」
「そう、ですね」

ばしん、と後頭部をはたかれた。神妙な雰囲気をかき消すように、笑われる。

「俺ゲイっすかー」
「ゲイだねぇ」

結構なカミングアウトなのに、した側もされた側も何でもないことのように笑う。ぴしぴしとこわばった身体が寒さの中でもゆるんでいく。

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