貴方の中の小悪魔
を知る神秘の占い

《MUMEI》
口移し
「内田さん……どうかしたの?」

「オレ達のために作ってくれたんだって」

オレは由自の簡易ベッドの側に大鍋を下ろした。

「中身は何?」

ふたを開ける。湯気がふわーっと浮き上がり、いい匂いがした。

オレは鍋の中を見た。
指で少しすくってなめてみる。

「――多分…ポトフだよ」
「ポトフ?何それ」

「ブタのしっぽと野菜とかを4時間くらい煮込むやつだったと思うけど」

「4時間……!?」

由自はすごく驚いた。

オレも自分で言ってからすごく驚いた。

「と、とにかく食べよう。由自、食べられるだろ?」

「お、おう」

鍋を台所まで運び、用意をする。

「ハイ、由自。自分で食べられるか?オレが食べさせてやるか?」

「うん……。じゃあ俊、お願い」

スプーンでニンジンをすくって由自の口元まで持ってってやる。

「俊、オレ口移しがいいな」

「は!?」

「起き上がるのもきついんだよ……正直。それにその方が早く元気になると思うんだ」

「で…でも口の中は菌だらけなんだよ」

「うがいしてきて」

……拒否できなかった。この方が早く元気になるなんて嘘だってくらいわかるのに。







――オレ、まさか由自を求めてるのかな?


……これも否定できない。


「俊?」

ニンジンを口にふくむ。噛んでから顔を近付けた。

唇が触れる。

ゆっくりと口の中身を舌で由自の口の中に移していく。

「ん………」

移し終えるとスープを由自に飲ませた。

「おいしい。ありがとう、俊」

「別にこれくらい……。早く元気になれよ」

「うん!俊とはまだ1回しかしてないからね。早く治してヤってあげるよ」

「い…っいいよ!ヤらなくていい」

「照れなくていいよ。わかってるから」

「違……」

「だって俊、さっきキスした時すごく嬉しそうだったよ?」

顔がみるみる赤くなっていく。

顔に出るタイプなんだ……オレ。

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