《MUMEI》 「酷いの……どっちだよ。」 とっくに息は出来ていたんだ。 「命の恩人だぞ?」 暫く見ないうちに顎に髭が生えていた。 むず痒いのはそのせいだったか。 「取り敢えずこっち来い。」 荒んだ公園まで誘導された。 「いつも追われてるの?」 「まあな」 さらりと言われた。 「葛原って覚えてる?」 「女?男?」 「……女」 女に決まってるだろ。 「わかった、刃物女だ。 私とあの女どっちが好きかって言ったから戦って生き残った方にするって言ったときの。」 実に可笑しそうに話す。 「………………っ」 俺は声も出ない。 「その時は最善の策だったんだ。」 「相手に失礼だ。」 声を振り絞る。 「キッパリ言ったら傷付くだろ、“どっちでも無いから死んでくれ”ってさ。」 俺を呼ぶ心地よい音色でなんて言葉を吐くんだ。 「嘘だ……」 兄貴じゃないこんなの。 誰だお前は。 「……喘息の次は過呼吸かよ。」 前へ |次へ |
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