《MUMEI》 よつばとクローバー「あ〜、もうお別れかぁ〜寂しいよ〜!」 (いい加減に離してほしい…) 私を『クローバー』の前まで送ってくれた父は、いつまでも私を抱き締めていた。 「太郎さん。ご両親に、挨拶しなくていいの?」 「…もうちょっと」 「…さっきもそう言ったけど」 「パパ、ずるい」 華江さんと友君が呆れていると、後ろから車のクラクションが聞こえた。 工藤一家が海から戻ってきたのだ。 常に日焼け止めを塗っている咲子さん以外は、皆真っ黒に焼けていた。 車から降りてきた双子の笑顔が、旅行がどれだけ楽しかったのかを現していた。 「まったく、相変わらずね、兄さんは」 「だって、予定より一日少なかったから、全然足りなかったんだよ!」 父の言葉に咲子さんは首を傾げた。 (…まずい) 「それより、店の中に入りたいんだけど、いいかしら?」 「えぇ、いいわよ」 華江さんが話題を変えてくれた。 「さ、行くわよ、太郎」 そして父を私から引き離した。 私は心から、華江さんに感謝した。 「「友君も行こう」」 「うん」 双子に手を引かれながら、友君も後ろから付いてきた。 前へ |次へ |
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