《MUMEI》

―――だが、レモンイエローの的玉は、コーナーポケットの内経にクルリと蹴られ、無情にも弾き返された……。



打ち終わった後………中島は肩を震わせて泣いていた…。



「――――中島…………。」



僕は、その憔悴した背中に手を添えようとしたが――…

―…すぐに自分に彼を慰める資格が無いことに気付いて、寸前で手を止めた。



中島は搾り出すような声で続けた…。


「磯野………キミは僕のかけがえのない親友だ…。


――キミだけは…


…僕を裏切らないでくれょ…」



親友のすがるような弱々しい声が、僕の心臓を貫いた――…。

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