《MUMEI》

命はまだあったようだ。

マンションまで無事に着いた。

「あれ、乙矢に俺がやった襟巻きは?」

「ストール」

世代を感じさせる。

「交換した。」

「……交換?!クリスマスなのにサッカーでもしたのか!」

予想通り焦っている。

「“二郎”とな。」

物的証拠の手袋を見せてやる。




……俺の予定を変えたことを悔やむがいい。



「も、モノホン?」

「本物。」

またしても世代の差を知らしめられた。

「手、小さくない?じろーちゃん。」

ぎちぎちの手袋を脱がす。

「手だけじゃない。顔も脚も尻も小さい。」

先刻触って実証してきた。

「どうせ、おっさんはメダボにならないようにするだけで必死ですよ。
小さくもなければ加齢臭ですよ……」

おっさんなりに主張してきた。


「気だけは若いくせに……」

よく言うよ。

「ええ、性的欲求は若い子には負けませんよ?」

それも実証しなければ。

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