《MUMEI》
彼女 〈私〉
椎名くんは、ちゃんと電車の時間に間に合うように、来た。



「…おっす」


「おはよ、今日は起きれたんだね!」



電車を待つホームで、挨拶を交わす。

すると、椎名くんが



「これ」



と言って、私の目の前に紙袋を突き出した。



「……??」



戸惑いながらも受けとると、



「…弁当、どーせ無いんだろ」



と、怒ったように言った。



「…え、これ椎名くんが??―…わざわざ作ってくれたの!?」

―…嬉しい!!!



私が訊くと椎名くんは、


早く起き過ぎちゃったから、と、頭を掻きながら俯いた。



うそ、

椎名くんは、お弁当作るために早起きしてくれたんだ。

―…分かるよ。



椎名くんに笑いかける。



「すっごく嬉しい!!!―…ありがとう!!」


「…べつ、に」



また怒ったみたいな返事。
…照れてるんだ、なんか―…


―…何か、かわいいな。




……それにしても、どうやってママを納得させたんだろ??


電車来たぞ、と横を向いてぶっきらぼうに言う椎名くんを見ながら、
ふと、そう思った。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫