《MUMEI》
【完。】
翌日、病室でいつもと変わらず、ヨウスケと何気ない会話をしていた。




トントンッッ!




『どうぞ。』




思わず立ち上がる私。




“きっと先生だ。包帯取りに来たんだ…。どうしよう…。緊張する…。”




“…包帯が取れたら、ヨウスケの目が見えてるってことだよね?…改めて再会って感じじゃん。緊張するよ…。”




ゆっくりと開くドア。




『やっほー♪』




…リコだった。




その後ろにはコウタ。




そして、そのまた後ろには憐が立っていた。




“このスリーショットは未だに変な感じ…。”




『おっと、お邪魔でしたぁ〜?』




コウタが茶化す。




『あ〜かなりな。』




ヨウスケの言葉に驚いた。




“…普段はそんな事言ったことないのに。”




『そりゃ〜3年ぶりに会えた彼女だもんね。二人きりがいいよね〜。』




リコも続けて茶化す。




『おい。…そんなことより目はどうだ?』




和やかムードを一刀両断する、さすがの憐。




『……あ〜今日包帯が取れるんだ。』




そう言ったヨウスケの声はやっぱりどこか不安そうだった…。




トントンッッ。




またドアを叩く音。




『失礼しますよ。』




今度は間違いなくお医者さんだった…。




『今日は、包帯を取る日ですから面会の方が多いですね。
さぁ早くお友達の顔が見たいでしょ?
早速とりましょうか?』




私の緊張も知らない、お爺ちゃん先生は、すんなりとヨウスケの包帯に手を伸ばした…。




『待ってください。』




ヨウスケは先生の手を払いのけた。




みんな愕然としていると




『…すいません。先生。…これ…自分で外してもいいですか?』




『…えぇ。構いませんが…。』




『…すいません。ありがとうございます。』




と言って立ち上がるヨウスケ。




『瑠伊。コッチ来て。』




ヨウスケは、私を正面に立たせた。




向かい合った私達…




そしてヨウスケは、ゆっくりと包帯を外していく…。



最後のガーゼを取ると、黄色い消毒液まみれのヨウスケの目が見えた…。




『では。ゆっくりと目を開けて下さい。』




お爺ちゃん先生が言う。




『…はい。』




言われた通りゆっくりと目を開くヨウスケ…。




目の前に立っていた私と目が合った。




でも…ヨウスケは何も話さない…ただ、ただ、私をじっと見つめてる。




“まっ!まさか!?見えてないの?”




と思った瞬間、




お爺ちゃん先生が言う。




『ヨウスケくん見えているね?』




『…はい。』




ヨウスケは私を見つめたまま、小さな声で答えた。




『もう大丈夫ですね。
今は視力が少し低いですが、すぐに良くなります。
…しかし強い光はまだ刺激が強すぎますから避けて下さいね。
例えば…太陽を直視するなんてことは…。』




『先生。』




ヨウスケが先生の言葉を遮った。




『…先生。もう見ちゃいました。……太陽を。』




そう言ったヨウスケは私に優しく微笑んだ。




『バカァァー!!』




私はヨウスケに、ぶつかるように飛びついた。




『ヨウスケのバカァァ。
ビックリさせないでよ。
怖かったんだから…ずっと…もう会えないかと思って…目…見えてないのかと…思って……。』




『…見えてるよ。ちゃんと瑠伊が見える。』




ヨウスケも私を強く抱き締めた。




『瑠伊。愛してる。』




ヨウスケの言葉に、私は思わず叫んだ。




『私も愛してるよ!!』




【完】

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