《MUMEI》 椎名くんのことを『かわいい』なんて思う日が来るなんて、思ってもみなかったな。 …だって、私は椎名くんに『怖い』っていう印象を持ってたから。 空手5段なんていう、ウソかホントか分かんないような噂はあったし、授業中はいつも寝てるし。 髪は綺麗な茶色に染まってるし… 無口でクールなイメージ。 そんな勝手なイメージも邪魔して、喋ったことすら無かった。 …でも。 椎名くんと喋るようになってから、優しくて、強くて、少し天然で、照れ屋で… ―…かっこよくて。 これは女の子がほっとかないな、って思うようになった。 電車の窓に映る私は、今は椎名くんの姿。 中身だけじゃなくて、見た目もかっこいい。 柔らかな短い茶色の髪に、切れ長の瞳。不敵な笑みが似合いそうな薄い唇。 ―…でも、椎名くんには、本当は無邪気な笑顔が一番似合う。 それは、最近気付いたこと。 ―…他にも、今まで気付かなかったことが沢山。 やっぱり今まで、彼女とか居たんだろうな… なんで、今は彼女欲しくないんだろ?? ふいに、肩への小さな重みを感じて、隣の椎名くんに顔を向ける。 私の姿をした椎名くんは、椎名くんの姿をした私の肩に、頭を預けて眠っていた。 …やっぱり、わざわざ早起きしてくれたんだ。 私は小さく微笑むと、 椎名くんを起こさないよう、ゆっくりと前を向いた。 前へ |次へ |
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