《MUMEI》

◇◆◇

 月が出ている。

「───────」

 淡い色に染まった紫苑。

 咲弥はかがみ込むとその花に触れる。

 仄かな明かりに浮かび上がる、小さな花。

 咲弥はまるで夢の中にいるような、不思議な気分に浸っていた。

「──目ぇ覚めちまったか?」

「あ‥ううん、起きてたの。黒蝶も?」

「ん、まあな」

 黒蝶は呑気に答えた。

 ◇◆◇

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