《MUMEI》

◇◆◇

(‥‥ぁ)

 ふと目を向け、咲弥は黒蝶の刺青が顕になっている事に気が付いた。

「黒蝶、それ──」

 その刺青は、桜の頃に初めて見たものと同じ、黒い蝶。

 改めて近くで見ると、かなり細く装飾されているのが分かる。

「ん?──ああ、夜だし‥いいかなと思ってさ」

 彼女が己の刺青を見下ろして俯きかげんになると、下ろされた長い黒髪が、はらり、と頬にかかる。

(綺麗‥‥)

 咲弥は心の中で呟いた。

◇◆◇

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