《MUMEI》

「こんにちは」


私が躊躇いがちに声をかけると、三人は慌ててガラスから離れた。


…どうやら今、私の存在に気付いたようだ。


「そろそろ帰った方がいいんじゃないか?」


「そうだぞ、春樹。お前には瞳がいるんだから」


光輝さんの言葉に、勇さんが口を開いた。


「何だよ、お前こそ店に戻れよ」


「そうそう、一番近所の俺が代表して挨拶しとくから」


祐介さんの言葉に、春樹さんと勇さんが不満を言った。


「あの子、照れ屋でまだレジは出来ないからね。
それに、…彼氏いるから、駄目だよ」


光輝さんの言葉に、祐介さんと勇さんが悲鳴を上げた。


春樹さんはさすがに動揺はしなかった。


「愛理も彼氏できちゃうしさ…」

「結子と麗子と薫子は、『好きな人いるから無理』って言うしさ…」


祐介さんと勇さんは私を見つめた。


「「蝶子ちゃんは…俊彦が怖いし」」


「…帰ろうか」


二人は春樹さんに促されて、店を出て行った。


(皆、それぞれ好きな人いるんだ…)


女性陣の意外な事実に私は驚いたが…


三人が帰って。


ようやく見えた厨房にいる新人を見て、私は更に驚いた。


(あれってまさか)

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