《MUMEI》

『彼女』は私を見つけると、サンドイッチ用のパンを持って厨房から出てきた。

「久しぶり、蝶子!」


月の光のような優しい微笑み。


「…蝶子ちゃん、知ってたの?



琴子ちゃんの事」


私は知っていたが、あまりに驚いてしまい、しばらく頷く事ができなかった。


「…どうして」


「和兄の…、あ、和馬の側にいたくて」


琴子は頬を染めながら、言った。


「それとね」


「?」


「話聞いてたら、この商店街、面白そうだったから」

琴子の言葉に、私は強く思った。


やっぱり、孝太の妹だ


それに、考え方、和馬と孝太にそっくりだ


ーと。

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