《MUMEI》 タメ口「びっくりした?」 「…したよ」 「タメ口になるくらい?」 和馬の指摘に私はハッとした。 「蝶子ちゃんさ、時々、俺や孝太にタメ口だったでしょ?」 「すみません」 「いいよ、むしろ、これからタメ口でいいからね。 俺にも孝太にも」 「いえ、仕事中はそういうわけには…」 私は今、『シューズクラブ』にバナナのパウンドケーキを配達に来ていた。 「真面目だね。でも、店長にタメ口な時点で、意味無いと思うよ」 「う…」 痛い所を突かれた。 「ね、決まり」 私は渋々頷いた。 「ところで、琴子はどこに住んでるの?」 「お、早速タメ口だね」 (自分で言えって言ったくせに) 私は和馬を睨みつけた。 「もちろん、俺の部屋だよ。もう離れるつもりないし。 …ていうか、離してやんないし」 「孝太は反対しなかったの?」 「『お兄ちゃん』は妹に甘いから」 私は納得した。 (それにしても、展開早いな) 二人が再会して気持ちを確認してから、まだ数日間しか経っていなかった。 私と俊彦は、再会して数ヶ月・誤解を解いてから一週間以上経った今でも微妙な関係だった。 前へ |次へ |
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