《MUMEI》 鍵とネックレス「…ところで、『あれ』どうしたらいい?」 私は小声で和馬に質問した。 「『あれ』?」 「誕生日にもらったネックレスと、…合鍵」 ネックレスは元々和馬が身につけていた物だし、合鍵は、やましい事は何もないが、さすがに琴子に悪い気がした。 「別に持ってていいよ。 あの鍵はね、アパートの部屋の鍵じゃないんだ」 「? どういう事?」 私は首を傾げた。 「あれね、俺の実家の部屋の鍵」 「何でそんなもの…」 「勘当されたくせに、戻れるわけもないのに何となく持ってたんだ。 でも、もういいんだ。 俺には、琴子がいるから」 それでも和馬が少し寂しそうだったから、私は『それでいいの』と確認しようとした。 しかし 「和馬!いい加減に戻ってこい!」 俊彦が現れて、和馬を引きずって行った。 「またね、蝶子ちゃん」 「あ、うん」 私と和馬のやりとりを見て、俊彦が鬼のような形相になったので、私は慌てて『クローバー』に帰った。 前へ |次へ |
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