《MUMEI》

◇◆◇

 咲弥が筆を置いたのは、卯の刻だった。

 途端眠気に襲われたが、何とか持ち堪える。

(草薙はもう起きてるかしら‥)

 悴む両手で集を持ち、廊下を行く。

 すると、ばったりと鉢合わせた。

「姫君‥?」

 草薙に、咲弥は集を差し出す。

「これ──」

 それを見て草薙は目を見開く。

「全部写したから。ありがとう」

 そうか、と返事をし、草薙は集を受け取る。

 こんな時気の利いた言葉の一つもかける事が出来ない自分がもどかしく感じられ、草薙は空ろな目で集を見つめていた。

「どうしたの?」

「いや、‥‥‥‥すまん」

「?」

 何故謝るのだろう。

 不思議に思いつつも咲弥は部屋に戻り、そして日暮らし、静かに寝息を立てていた。

◇◆◇

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