《MUMEI》

◇◆◇

「──なーに暗い顔してんだ?」

「‥‥‥‥‥?」

 黒蝶がにやけた表情で草薙を見ていた。

「本当に相変わらずだなぁ、お前」

「うるさい」

「はいはい、どうせあたしはうるさいですよ」

「何故開き直る」

「悪いかよ?」

「‥‥質問に答えろ」

「お前は堅苦しく考え過ぎなんだって。少しは気ぃ抜けよ」

「お前に言われたくは無い」

「ああもう話になんねぇ」

「───────」

 ぷい、とそっぽを向く二人を茫然とした表情で見比べていた咲弥は、思わず苦笑を洩らした。

「咲弥?」

 きょとんとする黒蝶。

 草薙も同じく目を丸くしている。

「どうされたのだ、姫君」

 ううん、と笑い混じりに答え、咲弥は思う。

(仲がいいのね──)

 だが咲弥がそんな事を思っていようなど、二人は知る由もない。

「‥‥‥‥?」

 黒蝶と草薙は揃って顔を見合わせた。

 そしていつの間にか、つい先程まで啀み合っていた事をすっかり忘れてしまったのである。

◇◆◇

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