《MUMEI》 真冬の風で冷点が麻痺してきた頬に少しだけ冷たいものがあたった感覚がした、雪だ。小さい氷の結晶がふわふわと外灯に照らされて黒の中を舞う。雪なんて久々に見た気がする、どうりで寒いはずだ。 アイツは今頃何をしてるんだろう? 俺は、一体どうしたらいい? 「ホワイトクリスマスだなー」 店長はたいして楽しくもなさそうにそう言うと、身震いをして休憩室に戻って行った。 一人でぼんやりと空を見上げると、冷たい温度が顔に触れる。 会いたい クリスマスで、雪で、寒くて、好きで。会いたいと言うには完璧すぎるほど舞台装置は整っているのに、俺には何も言えない。 会いたい、な 寒さも忘れて想いに耽溺していると、風邪ひくから黄昏てんじゃねぇゲイ野郎、と店長の叱責だか気遣いだかが扉の向こうから聞こえた。 地面に肩に頭に雪が積もるのと同じように、会いたさも募っていく。 会いたい 声に出して呟くと、白い息が煙草の煙のように霧散した。 . 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |