《MUMEI》 予想通りの展開「じゃあ、琴子から一言!」 「…よろしくお願いします」 控え目な琴子に周囲から『可愛い』と歓声が上がった。 琴子の隣には、挨拶を促した孝太と 「琴子は俺のだから!」 琴子の肩に手を回す和馬の姿があった。 「はいはい、じゃあ、乾杯!」 瞳さんの音頭で皆がグラスを掲げた。 (やっぱりこうなるのよね) 私は厨房で次々と料理を仕上げていた。 「蝶子ちゃん、手伝うね」 「今日はジャンケンしないんですか?」 「あぁ、うん。前の、蝶子ちゃんの歓迎会の時は勇がやったし。 それに…今回は蝶子ちゃんと二人で作るから、楽だしね」 そう言って、祐介さんはキャベツの千切りを始めた。 (多分、後半が本音だろうな) 私はカニクリームコロッケを揚げていた。 琴子が『ベーカリー喜多村』で働き始めた翌日。 早速『クローバー』で歓迎会が行われていた。 何となく、こうなると予想していたし、昨日咲子さんが和馬と孝太から予約を受けてきたから、今回は慌てなかった。 パン屋の朝は早いから、今日は一次会だけの予定だ。 だから、手際よく料理を出す必要があった。 「蝶子、飲まないの?」 前へ |次へ |
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