《MUMEI》

「うん。琴子、食べてる?」


厨房に顔を出した琴子は、無言で頷いた。


「良かった。他にも今作ってるから、あっちで待っててね」


私が笑顔を向けると、琴子は笑顔で頷いて、ホールに戻っていった。


「…笑ったとこ初めて見た」


ナポリタンに入れる野菜を切っていた祐介さんの手が止まっていた。


「祐介さん、パスタそろそろ上がります」


私が言うと同時に、タイマーが鳴った。


「わ、待って!あとピーマンだけだから!」


祐介さんは慌てていた。


(まぁ、無理も無いよね)


琴子の笑顔は本当に可愛いから。


「そ、それにしても、蝶子ちゃん、琴子ちゃんといつの間に仲良くなったの?」

まな板のピーマンを、私が使っているフライパンに入れながら、祐介さんが質問しました。


「え〜と、それは…」


「それは?」


私はフライパンを揺らしながら、答えに困っていた。

「あ、冷蔵庫からケチャップ出して下さい」


「…誤魔化した?」


「違います、本当にです!」


「はいはい!」


私の言葉に嘘は無いと気付いた祐介さんは、慌てて冷蔵庫に向かった。


ナポリタンのケチャップは、何とか間に合った。

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