《MUMEI》

「なおひろー?寒いからここ開けろやー」

電話の向こうと扉の向こうから甲高い声に挟み撃ち、がんがん、と遠慮なく扉を叩かれる。このまま通話ボタンを切って心地好い惰眠を貪ろうかと一瞬考えるも、数時間前の切実な願望は未だ溶けず、

「‥‥今開けるから待ってろ」

抜け出す温いベッド、足をおろすとフローリングが冷たい。

「メリークリスマース!」

鍵とチェーンを外すと満面の笑みと突き出されるコンビニ袋とケーキの箱。予想通りの茶髪に頬がゆるむ自分が情けない。
どういうことだ?喜ぶべきなんだろう、けど、降って湧いた幸福に疑問。

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