《MUMEI》

「さとちゃん何してるの?さっさと食べちゃいなさいよ」


なかなかランチを食べ終わらない私を、リナ先輩が急かす。


「ごめんなさい!」


私はランチを無理やり口に詰め込む。


「リップが失くなるなんて珍しいことじゃないわよ」


リップを必死に探す私に対してリナ先輩が言う。


「そうですよね・・・」


なんて返事をしたものの、手紙の件もあるので私はとてもナーバスになっていた。


「私なんかリップをすぐ失くすから、潔く買うのをやめて、さとちゃんに借りてるのよ!」


リナ先輩が自信満々に言う。


「そうだったんですか・・・」


意外な真相を聞いて呆れてしまった。


「細かいこと気にしてたら皺が増えるわよ」


三十路近いリナ先輩は重々しく言う。


「先輩が言うと信ぴょう性が高いです」


「どういう意味!?」


冗談ぽくリナ先輩は怒り、でもそれは面白くて、リップのことなんて、もういいかって思えてしまった。

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