《MUMEI》 食事もお風呂も済ませ、溜まっているシャツにアイロンをかけていると、玄関の鍵を開ける音が聞こえた。 ガチャ 「ただいま〜」 帰って来た・・・ 「おかえり」 夫の健一が疲れた顔をしてリビングに顔を出す。 「今日、谷田さんに千円借りたから後でちょうだい」 は?千円? 「なんで千円借りたの?」 昼食は千円で足りるはずなのに・・・ 「いや、ちょっと会社の近くのマッサージに行ってさ」 健一が嬉しそうに言う。 「いつ?」 「今日」 今日? 「今日は残業だったんじゃないの?」 メールしてきたじゃない!? 「仕事中に少しだけ抜けて行ったんだ・・・」 何よそれ・・・ 「そんなの聞いてない!」 「聞いてないって・・・別に言うほどのことでもないだろ?」 言うほどって・・・ 私なんてご飯作るために仕事が終わったら急いでスーパーに行って買い物して、帰ってからも休む間もなく、ご飯を作ってお風呂掃除をして、しかも健一のシャツにアイロンをかけてるっていうのに!! なのに!? 「良い御身分なのね?ご主人様は!?」 前へ |次へ |
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