《MUMEI》
恥 〈おれ〉
車内アナウンスにはっと目を覚ます。


顔を上げると、ものすごく近くに、おれの顔。


―…おれの、顔??



「…う、わ!!」



慌てて立ち上がる。



「…おはよ、起きたね」



おれの姿をした蓬田が、のんきに言う。



「え、おれ…、おれ寝てた!?」


「うん。ぐっすりだったよ〜、『おれ』の肩に寄りかかって」



にやにやと笑いながら答える蓬田。



「〜〜…っ!!!」



恥ずかしさで、言葉が出ない。


女の肩に寄りかかって眠るなんて…カッコわりい…


―…あ゛――…


早起きが祟った…


…恥ずかしすぎる…



おれがうなだれていると、



「し…蓬田、行くよ、早く降りないと電車出発しちゃうよ!!」



半分女言葉の蓬田に急かされた。



「ね、しい…蓬田は、先に行ってて!!」


「…おう。―…けどお前さ、もっと男らしく喋れねえの??」


「う、うるさい!!椎名くんだって!!
もっと女らしく喋れないの!?」


「…喋れるわよ」


「…も〜!!…ふざけてないで、早く、行って!!」


「…へいへい。じゃーな」


「…じ、じゃあな!!」



…やっぱ、悪いことしたよな…



ひとの告白を『断る』なんて、誰だって心が痛むことだ。


怒ったように、…恥ずかしそうに男言葉を使う蓬田を見て、そう思った。

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