《MUMEI》

「孝太って、今はかっこいいけど、来たばっかりの頃は、全然イケて無くてね。
俊彦や和馬に『こいつ、どうにかしてくれ』って、うちのお店に連れて来られたの。

それが、出会い」


麗子さんは懐かしそうに目を細めた。


「そうなんですか…」


今の孝太からは、全く想像できなかった。


「瞳のとこに写真あるかもしれないから、今度見せてもらったら?

びっくりするわよ、きっと」


笑いながら言う麗子さんに向かって、私は頷いた。


「それで、あの…」


「私が何でそんなイケてない孝太を好きになっちゃったか、でしょ?」


麗子さんの言葉に、私は頷いた。


麗子さんは、オシャレでいつも身だしなみに気を使っている。


そういう意味では、孝太よりも和馬と気が合う気がした。


「ん〜、何か、世話を焼いてるうちに真面目なトコとか、意外と冷たいだけじゃないトコとか見えて、何か、いいなぁって…

私の周りに今までいなかったタイプだし」


「確かに…」


私は商店街の賑やかなメンバーを思い浮かべた。


「孝太の好きな音楽知りたくて、『お店に合う音楽一緒に探して』って買い物に付き合わせたりしてね」


(それで…)

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