《MUMEI》

「あ、誤解しないでね。
いい曲だから、まだ流してるけど、もう、…諦めてるから」


(…嘘)


麗子さんは必死で笑っていたが、私はさっきの態度から、麗子さんはまだ孝太が好きなのだと思った。


「…ずっと好きな子がいるんですって」


「え?」


「振られた理由」


麗子さんは一気にコーヒーを飲み干した。


「なのに、蝶子ちゃんと仲良くしてるから、最近ちょっとムカついてたの、ごめんね!」


「あ、いえ、そんな…」


麗子さんが私に手を合わせて謝るので、私は慌てた。

麗子さんは、すっきりした顔で『またね』と言って帰って行った。


(これは…もしかして、和馬と同じパターンなのかな?)


その割には、孝太は真剣に見えた。


しかし、麗子さんが振られたのは、私が来る前の事だ。


その時既に孝太には、『ずっと好きな子』が…


『思い出して』


琴子の言葉が頭をよぎった。


(まさか…ね)


もし、仮に昔、私が孝太と出会っていて、孝太が私を好きになっていたとしたら、さすがに記憶に残るはずだ。


『昔はイケて無かった』


(でも…)


姿は変わっても、お互い名前は変わらない。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫