《MUMEI》

「は?彼女?」

生白い顔の上には目と口の3つの真円。

「なに、彼女って?」
「約束あったんじゃねぇのかよ」

ローテーブルに箱と酒を置きながら、銀二の顔を見ることができない。
何だか馬鹿馬鹿しい。あんなにも会いたいと思っていた相手に、こんな言い方しかできないだなんて。自分の情けなさに泣きそうになる。

「あ、あれはねー。仕事の打ち合わせ」

・・・・え?

フラットに答えられて固まる。仕事の打ち合わせ?

「俺ねぇ、今ちょっとだけ読者モデルの仕事やってんだー」

・・・・モデル?



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