《MUMEI》

◇◆◇

「───────」

 丑の刻。

 薄明かりの中、ゆらり、と影が動く気配がし黒蝶は振り返った。

「咲弥‥‥どうしたんだ?」

「あ、ごめんなさい‥。さっき目が覚めたんだけど、何だか眠れなくて‥」

 咲弥が済まなそうに苦笑すると、黒蝶は彼女を招き入れた。

「確かに、この刻に目が覚めるのは厄介だよな」

 こくり、と咲弥は頷き、徐に黒蝶の隣りに座る。

 揺らめく灯。

 帳に映る、二人の影。

「あのね、黒蝶」

「ん?」

「私───‥」

「どうかしたのか?」

「私ね、ここに来てから本当に毎日が楽しいの。お花を見たり、お出かけしたり、二人とお話したり───」

「そうか、そりゃ良かった」

 黒蝶は満足げに笑った。

◇◆◇

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫