《MUMEI》

「やー、あんときのなおひろ面白かったなぁ」

同じように夏のことを思い出していたのか、それにしても失礼きわまりない言葉が、隣の茶髪男から漏れる。

「そういえばさ、何であんときお前あそこにいたんだ?」
「あー。なんだっけなぁ。煙草買いに行ったか、コンビニ行ったか、何かそんなんじゃね?」
「へー」
「でもホントびっくりしたわアレ!雨ン中蹲ってんだもんね、ほとんど変質者ですよ」

当時なら到底いえなかったのだろう、今更なツッこみに胸を抉られる。確かに痛いな、と自分で思いなおしてがっかり

「懐かしいねぇ」
「懐かしいな」

寂しさをかき消すように煙草に火をつけると、俺にもちょうだい、といつか聞いたセリフで言われる。あの時と変わらず、ラキストを食む口元に目が行く。

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