《MUMEI》

「・・・・東京行ってもさ、メールとかするな」

ぽつりと呟かれた言葉に隣を見ると、モデルの卵は複雑な顔をしていた。

「遠距離恋愛じゃねーんだから」

泣いてるんだか笑ってるんだか、よくわからないその横顔を眺めていると、思わず何かを言ってしまいそうで、俺が心にもない軽口を叩くと、吹き出した。いつも通りの軽いトーンで滑り落ちた言葉に、内心で安堵する。そういえば、コイツと一緒にいるようになってから、感情と表面を切り離すのが上手くなったような気がする。喜んでいいのか微妙な悲しい特技だ。

「寂しかったら電話してこいよ。絶対出てやらねぇから」
「酷すぎ!鬼か!」
「そのかわり勝手に番号変えたりすんじゃねーぞ。お前は俺に、知り合いになったモデルを紹介するという大役があるんだからな」
「この人最悪だ!」

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