《MUMEI》

「ぎんちゃーん、行かないでよ寂しいわよぉ」
「そうですよー近藤先輩いないと寂しいですよー」

恰幅のいいパートのおばさんと、俺たちより一つ下の女の子二人に泣きつかれ、もらい泣き気味な銀二はそれでも嬉しそうだ。抱きついたり縋りつかれたり、グラスがひっくり返ったりと宴の場はごちゃごちゃしている。

「ありがとうございます、俺マジでビッグになりますから!」
「そうだお前ならなれる!!」

着実に酔っ払っている主役と店長が高らかに叫び、周りから歓声があがる。
穏やかな喧騒を聞きながら、俺は緩慢にグラスを傾けていた。酒は上手いし場は盛り上がっていたが、複雑な気分を抱えたまま騒ぐ気にはならない。主役から少し離れ、周りのバイト仲間と適当に談笑しながらグラスを傾ける。

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