《MUMEI》
女村
「沙羅、起きろ。夜がくるぞ」


「シャラ、起きて…」


体を揺すられる。


「沙羅殿ォ〜」


「シャラさま…起きて」

4人のお供に起こされる。


「ん〜、どれくらい寝てた?僕」


服や耳の装飾具が音をたてて揺れる。


体を起こしたからだ。


名は、沙羅…知人やお供にシャラと呼ばれる。有に150年生きているが、人間としての見た目は永遠の15才。


特殊な一族の血が入っているらしい。

…自分の生い立ちが解らない。


「ん〜、3時間くらいだな(六)」


お供は稲荷族の双子、六(リュー)兄と妹の五(イサミ)。
六は沙羅、五はシャラと呼ぶ。


後は狛犬族の双子、姉・四(ヨタビ)弟・三(ミタビ)。
四はシャラさま、三は沙羅殿と呼ぶ。


彼らが僕のお供達。
みんな見た目は7才ぐらいで、平均身長120センチくらいだ。
200才ぐらいなのだが…。


彼らもまた、50年くらい一緒にいるが、みんな姿が変わっていない。


「そろそろ宿をさがさなくては、……また野宿ですよぅ(四)」


「そうだね。さすがにこの森の中はね…四と三で探してきてくれる?」


「「はい(四&三)」」

二人はよつんばえになって村宿を探しに行く。
二人は尻尾と耳を布で隠しているので御使いなどをよく頼むのだ。


「それにしても、神秘的な森だね、お兄ちゃん(五)」


確かに。
自然が生み出した木と木のうねり、周りにはコケが生え、どこからか水の流れる音。


美しい。
時元界には、無空間という、移動力を持つ空間がある。


時元界は、地球にある様々な場所、同じ所でも、時代が違う時もある。


それぞれの場所は、国に属しているが、そのへんはよく解らない。


国から国への移動手段は最終的に無空間を通る事になる。


無空間は広く、出口は2つ以上あり、地図なくしては行きたい場所には行けない。


さらに無空間は自然の姿をしている、例えばこの森だ。


この森も無空間なのだ。

「あ、戻ってきた(六)」


2人がこちらへ戻って来るのが見えてくる。


「どうだった?」


問うてみる。


「この先に村がありました。行ってみますか?(三)」


村か……。


「行ってみようか。泊まらせてくれるかもしれない。」


「森を出てすぐの所ですぅ(四)」


すぐ……か。



「ここですぅ(四)」


「「「えっ……」」」(沙羅&六&五)


なっ……ここ、術がかかってる?
しかも……………。


「女の人だけ?」


男の姿が見あたらない。

「旅人ですか?」


40歳ほどの女性に声をかけられた。


「え、えっと…はい、そうです。あのスミマセンが宿はありませんか?」

「えぇ、ひとつ部屋が空いております。」


ここは日本の戦国時代の村か……。


お供は人間ではない。


そのため、時々人間に驚かれたりする。


それもそうだ。


見た目が普通の人間の子供に、犬や狐の耳と尻尾、牙があるのだ。
僕も人間ではない。
100年も15歳の姿なのは故意ではないのだ。


僕はともかく、
何故この女性はお供に驚かない?それに目が虚ろだ。


「随分な美少年ですね。女の子かと思いました」

…人が気にしている事を………。




「なかなかキレイですね。ここ」


「ありがとうございます。お食事は後でお持ちします。
……ごゆるりと」

なんだか怪しい。


「あ、代金は……」


「明日お渡来ください」

…なんか怖い。


「は、はい」

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