《MUMEI》

◇◆◇

 陽がとっぷりと暮れた頃。

 咲弥は月明りを眺め、漂ってくる花の匂いを楽しんでいた。

「───姫君」

「草薙‥、どうしたの?」

 もうとっくに寝ているのだと思っていた咲弥は、草薙が現れた事に驚いた。

「疲れてない‥?」

「あの女が──‥」

「?」

「黒蝶が言っていたのを思い出した」

「息抜きも大事‥って事?」

「‥‥‥‥ああ」

 すると咲弥は微笑を浮かべた。

「ねぇ、こっちに座らない?」

 草薙は暫し立ち尽くしたが、徐に腰を下ろした。

◇◆◇

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