《MUMEI》

足に付いた墨汁は先生が洗ってくれたおかげで、きれいに落ちていた。
上履き変わりに、来客用のスリッパを百花が借りて来てくれて、私はそれを履いた。

数分後、先生は放送で呼び出され、職員室へ戻って行った。

私たち三人は、空き教室の窓際に座っていた。

「奏・・・ごめんね。」
「え?」

百花が深々と頭を下げた。さっきのことだろうか?

「私が名波先生のこと好きだと思って、制服買ってもらったこと、言えなかったんでしょ?」

百花にはなんでもお見通しだ。私は少しだけ首を縦に動かした。

「そうだったんだぁ。」 光はなんだか安心したように微笑む。

「・・・私ね、杉田くんと付き合ってるの。だから先生のこと、とても憧れているけれど、もう恋じゃないんだよ。」


・・・私は絶句した。まさか百花と杉田くんが付き合ってるなんて・・・。

「成原さんにばれると殺されそうじゃない?だからできるだけ秘密にしてるんだよ。」
光は解りやすく説明してくれた・・・。

成原さんは、杉田くんに異常なほど執着しているらしい。自分が想わせぶりな態度をとったせいだと、杉田くんはそれを見過ごしているそうだ。
・・・それでいいのかな?ちゃんと本当のことを言った方がいいんじゃないかな?私は話しを聞きながらそんなことを思っていた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫