《MUMEI》 足に付いた墨汁は先生が洗ってくれたおかげで、きれいに落ちていた。 上履き変わりに、来客用のスリッパを百花が借りて来てくれて、私はそれを履いた。 数分後、先生は放送で呼び出され、職員室へ戻って行った。 私たち三人は、空き教室の窓際に座っていた。 「奏・・・ごめんね。」 「え?」 百花が深々と頭を下げた。さっきのことだろうか? 「私が名波先生のこと好きだと思って、制服買ってもらったこと、言えなかったんでしょ?」 百花にはなんでもお見通しだ。私は少しだけ首を縦に動かした。 「そうだったんだぁ。」 光はなんだか安心したように微笑む。 「・・・私ね、杉田くんと付き合ってるの。だから先生のこと、とても憧れているけれど、もう恋じゃないんだよ。」 ・・・私は絶句した。まさか百花と杉田くんが付き合ってるなんて・・・。 「成原さんにばれると殺されそうじゃない?だからできるだけ秘密にしてるんだよ。」 光は解りやすく説明してくれた・・・。 成原さんは、杉田くんに異常なほど執着しているらしい。自分が想わせぶりな態度をとったせいだと、杉田くんはそれを見過ごしているそうだ。 ・・・それでいいのかな?ちゃんと本当のことを言った方がいいんじゃないかな?私は話しを聞きながらそんなことを思っていた。 前へ |次へ |
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