《MUMEI》 「いやでもさ、ホントにアイツいなくなると寂しいよなぁ」 隣に座るバイト仲間は同じ大学生、ビールを飲みながらしみじみ呟く。 「英田なんて特別仲良かったから特にだろ?」 「あー、まぁな」 曖昧に頷くと、太ったバイト仲間は続けた。 「東京いっちゃうんだなー」 「そうだな」 「大学辞めて一人で行くんだもん、すごいよな」 丸い顔にのった目は本当に寂しそうで、それは他の女の子たちやおばさんや店長も同じだった。みんな銀二がいなくなることを寂しく感じている。それを包み隠さずに表現できる皆がうらやましかった。 「近藤テキトーだけど可愛いもんな。いいやつだし」 「テキトーだけどな」 「テキトーだけどね」 バイト仲間は笑いながら頷き、丸い手で摘んだ軟骨揚げを齧る。 前へ |次へ |
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