《MUMEI》

「あれ?」

ふと視線をさまよわせると、上座でモデルと記者という設定の取材ごっこをしていたはずの主役と店長がいなかった。

「銀二は?」
「何か気分悪いとか言って、店長がお手洗い連れていきましたよー」

思わず呆れる。主役が体調くずすってどういうことだよ、と保護者的に考えてしまうのは、何より心配だからだ。テーブルに転がる空いたグラスとジョッキの数に、ますます心配になり、自分もトイレに行くついでに様子を見に行くことにした。
座敷を出て靴をひっかけ、暗い照明と喧騒の中を曲がって突き当たり。御手洗いの札がぶらさがっている渋柿色の木製の扉を静かに開けようとすると、扉の向こうから声が聞こえた。

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