《MUMEI》 「だから…」 孝太はそこまで言ったまま動かなくなった。 「あの…?」 「やっぱり、いい」 そして、孝太は妙な事を言った。 『話をする日も…運動会の日も、そのブレスレットは着けていろ』 ーと。 私は、その言葉の意味を、運動会のポスターに書いてあった 『見物の女の子達はアクセサリーを身に付けている事』 という注意書きの事だと思ったから 「言われなくても、ちゃんとしたアクセサリーこれしか無いもの」 と答えた。 その時 『そうか』と言った孝太の顔は 見た事も無いような満面の笑みだった。 孝太は何度も頷きながら、『シューズクラブ』の店内に消えて行った。 (何だったんだろう…) 私は孝太の意味不明の言動が気になったが、とりあえず、話せる機会が作れた事にホッとしていた。 そして、私は裏口から、正面に向かった。 今日は、雅彦から仕事用の新しいスニーカーを受け取る日だったから。 前へ |次へ |
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