《MUMEI》

「だから…」


孝太はそこまで言ったまま動かなくなった。


「あの…?」


「やっぱり、いい」


そして、孝太は妙な事を言った。


『話をする日も…運動会の日も、そのブレスレットは着けていろ』


ーと。


私は、その言葉の意味を、運動会のポスターに書いてあった


『見物の女の子達はアクセサリーを身に付けている事』


という注意書きの事だと思ったから


「言われなくても、ちゃんとしたアクセサリーこれしか無いもの」


と答えた。


その時


『そうか』と言った孝太の顔は


見た事も無いような満面の笑みだった。


孝太は何度も頷きながら、『シューズクラブ』の店内に消えて行った。


(何だったんだろう…)


私は孝太の意味不明の言動が気になったが、とりあえず、話せる機会が作れた事にホッとしていた。


そして、私は裏口から、正面に向かった。


今日は、雅彦から仕事用の新しいスニーカーを受け取る日だったから。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫