《MUMEI》

「あーもう、何でそんな泣くんだよ。英田とは仲良しだろ?」
「仲良し、と思ってるのはッ、俺、だけ、ック、です、」

しゃくりあげながらキレ気味に返す言葉は意味不明。どゆこと?何でそんなこと思うんだよ

「何でそう思うの?」

店長は俺の疑問を代弁するかのように穏やかに問いかけた。

「俺、がとうきょ、行くッて言っても、なおひろ全然、平気そ、だし、さみしいの、俺ばっ、かですもん」
「んなことないって。一番さみしいのは英田だよ」
「ッ嘘、つかないで、くださ、」

酒勢に任せたであろう言葉は途切れ、語尾が震えた嗚咽に変わる。本格的に泣き出してぐずぐずと鼻を啜り上げる茶髪男に、店長は小さく溜め息をついた。

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