《MUMEI》

「バカにすんなよ、俺だって最近は稼ぎいいんだからな」




本当は結構無理してるけどさ、でもたまには俺が格好つけたっていーじゃん!




「そうか?でもあんまりムリすんなよ」




フロントに電話すると時間ギリギリでモーニングセットが注文できた。

すると程なくしてたいそうな銀のワゴンでボーイさんが丁寧に運んできてくれた。

朝からにしてはびっくりするコース料理。
水一つにしたってフラスコの豪華版みたいなのに入ってきた!
つか注文してすぐ来るって凄いね、さすが一流ホテルだ!

「さすがセレブ御用達だな!ゆうちゃん、何だって買ってやるから遠慮せんでねだれ?」

「もういーんだってば!まったく秀幸は奢られなれてねーんだからよー 、いーから食べよう。つかそんなに俺って甲斐ねーか?」

「だって年齢差考えろよ〜!確かにゆうちゃん年齢の割りに収入多いかもしんねーけどよ〜、こういっちゃなんだが俺はめちゃめちゃ稼いでるんだぞ?だからよ〜」


ムギュッ!

「う゛っ!」



俺は秀幸の鼻を思い切り摘んで


「うるせえ!!もういーから大人しく飯食え!
つかそんなに金余ってんなら買ったマンションのローン繰り上げ返済しやがれ!」

「――イタイ!イタイとこ突かれたあ――!!」

秀幸は頭を抱えて崩れ落ちた。
つか舞台俳優らしいわざとらしい崩れ方で。


――勢いで購入したらしい一億越えのマンション…



…返済期間25年…




そんなん聞いたらもう値の張るモノは貰いたくない…。




「秀幸〜、美味しい?」
「はい、美味しくて有りがた過ぎて涙が止まりません」
秀幸の空になったグラスに頬づえつきながら水を追加してあげる。

窓から入る眩しい光が秀幸の酷い寝癖と不精髭を照らしていて。


更にちょっと顔がむくんでいて目の下にうっすらクマまで出来ている。

「ゆうちゃんもう食わねーのか?」

「秀幸食べれるんなら仕上げてよ、俺やっぱお好みで腹いっぱいにしたいから腹空かしとく」

「あっそ〜、全く相変わらずB級グルメ好きだなあ」

秀幸は俺の食べかけのムニエルに手を出し始めた。


――だってさ、食べてる秀幸見てんの幸せなんだもん。

なんかさ、大好きな人に自然な姿さらけだされるのって…、自分がそういった相手だって認められて…


――スゲー幸せ。

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