《MUMEI》
椿
ゴホッ……ゴホッ……
暗く湿った部屋に響く切ない音。

ゴホッ…

そこにいるのは、うら若き女一人。
口を押さえていた手を離すと、紅い、朱いもの。

血だ。

彼女は想う。

この感じ、前にもみたことある。こんな風に、咳がとまらなくて、血を吐いて。
……あぁ、母上の時と同じなんだ。

私は、死ぬんだ。…



同じ頃、彼女のいる屋敷を門外からみつめる、男一人。

彼の眼に映るは、悲しき女性の姿ではなく、屋敷を包む凄惨な“妖怪”…



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