《MUMEI》
隆志視点
「俺達も旅行しね?」


そう唐突に言うと惇は、はあ?という表情になった。


「達ってさ〜、裕斗達はお見舞いに行ったんであって旅行に行ったんじゃねーしさ〜、つか疲れるからしない」


「はー、もううちの惇ちゃんはつれねーなあ、まあ気が向いてくれんの待ちますか!」

惇は皿に盛った特製エビピラフをテーブルに座る俺の前に置く。

「いっぱい炊いたからおかわりしてね」
しかも極上の笑顔付きだ!

「うわ〜!めっちゃ美味そう!頂きます!」




「店じゃこんな贅沢なピラフありつけねーよな〜、スッゲー海老デかっ!」

「フフッ、こーゆうのが自炊の醍醐味だよね、あ、隆志ビール飲む?」

「飲むかな」

惇は何かと腰が軽い。
二人一緒に過ごしているときボサっとしてたりダラダラしているところを見たことがない。
今も俺にビールを渡すとテーブルの上の吸い殻の貯まった灰皿を持ってキッチンへと行ってしまった。

ほら、灰皿キレイにしておかわりの煙草まで持って来てくれた。

「惇、マジで俺んとこ来ないか?」
「―――何?突然」
小さい躰に似合わない位てんこ盛りのピラフを口に運びながら惇の表情は薄く笑っている。

「だからよ、同棲っつーの?―――その方がいっぱい一緒にいれんだろ…」

ちょっと自分で言ってて恥ずかしい。目線合わせてらんなくてうつ向くと惇はクスクスと笑いだした。

「なんだよ同棲って!フフッ、アハハハ!
同棲!」


「こら!俺は真剣なんだぞ!」


俺は惇の正面に移動し思わず正座。惇も笑いながらつられる様に正座した。



俺は両手をギュッと握って目線を合わせてもう一度


「一緒に住もう?――――そんで俺の傍に…居てくれないか?」

「――――――」



惇は暫く俺の顔をじっと見ていたがふと寂しそうに笑い、うつ向いた。



「―――嬉しいけどムリ」


「何で!」


「―――だって…」

惇はその理由を淡々と語りだした。そして俺は納得……

「納得できるか!よ〜し今から名古屋行くぞ!速攻惇の兄貴に会いに行こう!!」


俺は立ち上がり車のキーを掴んだ。



「おい!飲酒運転だぞ!」

「バーカ!免許あんのは俺だけじゃねーだろ?俺荷物まとめっから兄貴に今から行くって連絡しな!」

そういいながら俺はキーを惇に手渡す。

「なっ!俺が運転!?つ、つか兄貴に何しに会いに行くんだよ!
あの人は普通じゃないんだ!隆志が想像できる範囲の人間じゃない!」

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